2017年7月18日火曜日

工事に起因する建物損傷補償交渉

建設工事には補償問題が必ずといっていいほど付きまとう。
トンネル工事で異常出水が長引けば渇水が発生して農作物等の補償をしなければならない。軟弱地盤で盛土をするととんでもない場所に地盤隆起が発生したりする。

昭和52年、豊橋で新幹線保守基地増強工事を担当していた時の出来事である。
構造物の基礎工事でシートパイル(鋼矢板)をバイブロハンマーを使用して施工していた。この工法はバイブロという振動発生器で重量を加えながらシートパイルを振動させることによって地中に打ち込む工法である。

ある日電話がかかってきた。いきなり、「この馬鹿ども!てめぇらは何をやってんだ。事務所の壁がクラックだらけになった。どーしてくれる!」ともの凄い剣幕で怒鳴られた。
平身低頭で平謝りし「後ほど補償係長と同行してお伺いします」と電話を切った。
事前にそっと現場調査をした。建物の壁一面がクラックだらけ。その状況を本局補償係長に説明し、建物所有者である建設会社社長と補償交渉をすることにした。

電話のあった2,3日後、補償係長と二人で建設会社に向かった。
きっと大声で怒鳴られるだろうと覚悟した。
会社に入って社長室前の廊下に差し掛かった。その廊下に100枚以上もあろうか、神社仏閣の御朱印状がずらりと掲げられていた。その中に加賀一の宮、能登一の宮があった。
そして社長室へ。
こんな御朱印状がずらりと掲げられていた
自己紹介を終え直ぐに「今、廊下の御朱印状を拝見しました。すごい趣味ですね。私は石川県出身ですが、白山神社や気多大社もあり感激しました。」と話をしたら、社長が次々と訪れた時の状況を説明してくれた。そして、「建物を直してもらえばいいからわかった」、「後ほど補償担当者を打ちあわせにこさせます」といって話が終わった。一言も非難の言葉はなかったのである。

自分の趣味に反応した人間に好感を持ってくれたものと思っている。
豊川稲荷へ安全祈願


0 件のコメント: