2017年6月28日水曜日

職務パスと組合員証

国鉄には職務パスというものがあった。
正式名称を鉄道乗車証という。
これは全職員一律に支給されるものではなく、職階で使用範囲が何段階にも分けられていた。


乗車証の有効期限は1年。区間は国鉄全線が最上級。最上級パスはだいたい40歳を超えないともらえなかった。
私は34歳で助役を拝命した時、全線パスをもらったが、1年後本局勤務になって一般職員に復帰した時には中部支社管内に降格されたものである。
支社管内の下位に管理局線管内があった。これは職員採用の2年後以降でないともらえなかった。

私は昭和36年3月1日に臨時職員、4月1日試用員、6月1日職員に任ぜられたのだが、この職務パスは職員任命の2年後まで出ない。
だが、この職務パスと全く同じ色合い、字体で労組から組合員証が配布された。
もちろん有効期限や区間といった文字はなく、発行者は地方本部長となっていた。これが職務パスと同等の効力を有していたのである。

当時、総評傘下の国労は私鉄総連と相互乗車の協定を結んでいた。
昭和36年6月から6週間、三島の学園で研修を受けたのだが、土、日にはこの組合員証をフル活用した。箱根周遊、伊豆大島方面、東京、三浦半島、東照宮方面の旅行を大いに楽しんだ。
組合員証の効力は絶大で、箱根のロープウェイ、芦ノ湖遊覧船、六国峠のケーブルカーまで組合員証が有効であった。
だが、国鉄は国労以外の当局寄りの組合所属職員もいて、この職員は相互乗車を違法乗車として見つけ次第厳しく取り締まったのである。

三島から丹奈トンネルを抜けると熱海駅である。熱海見物を終えて駅改札を通ろうとしたとき、駅員に組合員証を取り上げられ、大勢の乗客の切符を切りながら厳しく詰問された。
「そんなもんで乗れると思うのか。君はどこのだれか・・・」など長時間公衆の眼前でさらしものにされた。
立山登山から富山駅に向かう際に地鉄に組合員証を提示したら、「うちはだめです。乗車券を購入して」と断られたこともあった。彦根付近で車掌が検札にきて、また組合員証を取り上げられ違法乗車をきつく咎められたこともあった。金沢には新国労の組合員が多くなっていたので、相互乗車をためらう私鉄社員がいたのだが、北鉄は長くそれに応えてくれた。

2年後、晴れて管理局線管内パスをもらうことができて安堵したものである。



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