2019年4月18日木曜日

上位蜃気楼という稀な現象が出現

子供の頃、沙漠には蜃気楼というものが発生し、長旅で疲れ切ったキャラバン隊がもうすぐそこへ到達できると喜んだが、それは現実のものではないという話を聞いたことがあった。夢が蜃気楼のように消えたという例え話にもある。

吾々が何か物を目で見る時に、光を信号として受け取っているというのは周知のとおりだが、この光というものは「同じ密度」の中を進む際にはまっすぐ進むものの、「異なる密度」の物質に当たると「屈折」や「反射」を起こすという。
日本では前者の方の蜃気楼がよく見られる。これはアスファルトが照り付けられることで熱を帯び、砂漠と同じような環境が出来上がるためだ。その具体例として言われているのが「逃げ水」という現象である。
ドライブしていてかなり前方の路面に、何か別の物があるように見える時がある。これが「逃げ水」という現象だが、誰でも見たことがあると思う。
 
路面上の逃げ水
まるで地面に水たまりが出来ているように見えるこの逃げ水だが、そこにたどり着こうと近づいても一向に水たまりなどはないのだ。追えども追えども逃げていくので「逃げ水」というわけ。砂漠でオアシスの幻を見て追いかけてしまうという正ににあれである。

沙漠の蜃気楼
「蜃」という漢字は日本では蜃気楼以外に使うことがないという。そうえばそうだなぁ。
前置きが長くなったが、昨日の17日(水)昼前、富山県魚津市で「上位蜃気楼」が観測された。「上位蜃気楼」は春の蜃気楼とも呼ばれ、魚津などの限られた地域で、しかも年に10回程度しか出現しない珍しい現象だという。

対岸の家や構造物が間延びして見える
よくわからないので調べたところ、本来の景色と蜃気楼の景色を比較した写真があった。

上が蜃気楼、下が本来の景色
年に10回程度しか見られない上位蜃気楼は、逆転層がカギとなるという。富山湾の上位蜃気楼は、冷たい雪解け水が流れ込むことで大気の下の部分が冷やされたり、陸地で温められた空気が海上の冷たい空気の上に流れ込むことで発生すると考えられている。上位蜃気楼が発生しても、実際に肉眼で観測できるのは年に5回もあるかないかとのことなので、シビアな条件となりそうだ。ちなみに、下位蜃気楼は冬の寒い時期であれば毎日のように見えるとのことである。 

何故、蜃気楼現象の発生は魚津なのかというと、黒部川の水温の低い大量の水が富山湾に注ぎ込む位置関係にある。かつ、黒部川の跡が富山湾深くに残されていることも影響しているのだろう。
残念なことに、犀川にしても手取川にしても「大量の冷たい水」ではないこと、かつ、水深が浅いことにより蜃気楼は発生しない。


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