2018年7月5日木曜日

癌の早期発見に「線虫」が脚光

先月、腎細胞がんの摘出をした。初期の段階だったので自覚症状ゼロ、なのでよく見つかったものだなぁと幸運に恵まれた。早期発見であった。


がんは1981年以降35年もの間日本人の死因第1位を占める。
年間30万人ががんで命を落とし、3人に1人ががんで亡くなっている。また、生涯のうちにがんにかかる可能性は、男性の2人に1人、女性の3人に1人と推測されている。

医療費も膨らむ。厚生労働省の発表によると2013年には3兆8850億円が、がん医療に充てられた。この膨大な死亡者数と医療費を削減するには、何といっても早期発見・早期治療が第一だ。
ところが今のがん検診は、受診者にとって面倒なわりに費用対効果に課題がある。胃がん、大腸がん、肺がん、子宮がん、乳がんなどと部位別に診断を受けねばならず、時間はかかるし費用もかさむ。また、とくに早期がんは見つかりにくいという難点もある。そうした状況もあって、日本のがん検診の受診率は、全体でも3割ほどにとどまり、それがまた手遅れにつながるという悪循環だ。

今、そうした課題を一挙に解決するようながん検診の大変革が日本発で生まれようとしている。
検査するものは尿。使うのは「線虫」という体長1ミリほどの生き物。端的にいうと、1滴垂らした尿の匂いに線虫が好んで寄って来れば「がんの疑いあり」、嫌って遠ざかって行けば「がんの心配なし」となる。装置を使った大がかりな診断と違い、線虫を使ったこの方法は簡単かつ数百円と安価。さらに精度も95.8%と驚きの高さだ。しかも、ステージ0〜4まであるがんの進行度のうち、ステージ0や1といった早期がんも発見できるという。


今のところどんな部位のがんかは診断できていないが、線虫は「がんの有無」を発見してくれ、すい臓がんのように発見が困難ながんをも見逃さないという。したがって、「がん有り」となった人だけが従来の部位別検診を受ければいい。
この新たな検診法で、誰もが気軽にがん診断を受けるようになれば、がんの早期発見・早期治療につながり、がん診療のあり方を根本的に変えることになる。この画期的な研究を主導してきたのは、九州大学大学院理学研究院助教の廣津崇亮氏だという。

腫瘍マーカーという血液検査でも癌が発見できるという。
腫瘍マーカー(しゅようマーカー、英: Tumor marker)は、癌の進行とともに増加する生体因子のことで、主に血液中に遊離してくる因子を抗体を使用して検出する臨床検査のひとつである。また、生検検体や摘出された腫瘍の病理組織標本を免疫染色し、腫瘍の確定病理診断や組織型の鑑別に用いられるなど臨床検査の場で多く使われる。 


多くの腫瘍マーカーは健康人であっても血液中に存在するので、腫瘍マーカー単独で癌の存在を診断できるものはPSA(前立腺癌のマーカーに用いる)など少数であるといわれている。癌患者の腫瘍マーカーを定期的に検査することは、再発の有無や病勢、手術で取りきれていない癌や画像診断で見えない程度の微小な癌の存在を知る上で、確実ではないが有用な方法である。しかしながら、通常は進行した癌の動態を把握するのに使われるもので、早期診断に使える検査法ではない

従って、安価で手軽、かつ、早期発見率が90%以上という「線虫」による尿検査が今後急速に普遍化するものと考えられる。
たまたま早期癌が発見された人間として、皆さんに是非この検査を受診していただきたいと思っている。





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