2018年12月22日土曜日

能登の限界集落は今

限界集落の苦悩が続き、とうとう住民がゼロになった輪島市門前町大釜地区がある。



大釜集落
輪島市の市街地から車で1時間。同市門前町の山あいにある大釜地区には住民がいない。古里を捨てる集団移転と引き換えに、大型の産業廃棄物最終処分場の誘致を決めてから10年余りたつが、住民の決断の裏には、能登半島地震の影響があった。
「よく考えたいと言っていた人の決断を促したのが震災だった」。2014年6月まで同地区の区長を務め、現在は金沢市に住む谷口新一さん(63)は振り返った。


地震発生時、同地区は60~80歳代の6世帯11人が暮らす限界集落で、ほとんどの家屋が損壊。住民は隣接する剱地地区の避難所に1週間身を寄せたが、谷口さんは「助けは来ず、道路の復旧も遅れた。移転するかどうか悩んでいた人たちは『こんなに不便ならば仕方ない』とあきらめの声を上げ始めた」と言う。

大釜集落の春日神社
この時、家屋の倒壊などにより大量の震災ごみが生じ、廃棄物処理施設を設置する機運が徐々に高まった。市環境対策課によると、その量は約17万6786トン。年間1万立方メートルを処理していた同市美谷町の輪島クリーンセンターでは07年、想定の13年分の約13万立方メートルのごみが埋め立てられ、市内の処理施設の容量を圧迫。復興に向けてごみ問題が大きな課題となり、震災で疲弊した限界集落に新施設建設の矛先が向かうこととなった。

処分場の誘致を前に大釜地区の住民は一人また一人と去り、16年9月に集落は消滅した。「古里はなくなるが、せめて市民の役に立てたら」というのが住民らの総意だったという。
処分場建設計画はその後、一時反対の姿勢を示していた議会が容認する流れで昨年2月に住民投票が行われ、建設に向けて計画が再び動き出した。


一般的に、限界集落が消滅するケースは、人口の自然減や災害による住民の分散移住などがあるが、震災が人口減に拍車をかけるケースは東日本大震災でも各地で見られた。体力のない限界集落にとっては、いつ起きるか分からない震災もリスク要因の一つと言える。

去年のことになるが、2017年2月19日、輪島市門前町大釜地区で計画されている産業廃棄物処分場の建設問題をめぐる住民投票が行われた。
そして、1万人を超える有権者が投票。
しかし、投票箱が開けられることはなかった。
投票率が42・02%と、条例に定められた50%を超えず、住民投票が不成立となったためだ。

今回の住民投票で、クローズアップされたのが、投票率50%の壁。
この壁を乗り越えないと、重要な問題ではなかったとして開票されない仕組みになっている。産廃施設の建設賛成派は、この投票率50%の壁を使った戦術をとる。
輪島市長は、「建設に賛成の人は投票に行かないのも選択肢の一つ」と発言。さらに、建設推進の立場をとる市議会の最大会派は、投票率が50%を切るような作戦を展開した。住民投票という土俵に乗らずに不戦勝を狙うため、チラシを配って広く棄権を呼びかけたのだ。



産業廃棄物最終処分場建設を巡る19日の輪島市の住民投票が不成立となったことを受け、梶文秋市長は「(許認可権を持つ)県に方向性を出してもらう」と述べ、引き続き計画を進める考えを示した。一方、建設反対派の住民グループは「力不足だった」と不成立を残念がる一方、推進派の市議らによる棄権の呼びかけを「投票の自由の妨害だ」と厳しく批判した。




このような経過を辿った産廃処分場は、今月10日に着工 輪島・門前町大釜 計画公表から12年
輪島市門前町大釜の産業廃棄物最終処分場計画で、事業者の門前クリーンパークは、10日にも工事に着手することになった。計画公表から12年を経て建設へ動きだす。着工前の環境調査が終了したためで、年内は現地事務所建設などの準備工事となり、来年1月半ばから樹木の伐採を進め、来春には本工事に入る見通しだ。2021年度の運用開始を目指す。

産業廃棄物最終処分場の建設地付近に設けられたゲート。10日以降に着工する=輪島市門前町大釜
国土交通省の「過疎地域等条件不利地域における集落の現況把握調査」(16年)によると、15年4月時点で北陸3県では672集落が限界集落とされ、今後10年以内に消滅する可能性のある集落は35に上る

災害支援に詳しい金沢星稜大学の池田幸応教授(57)(野外教育学)は「少子高齢化に歯止めがかからない中で、今後も限界集落が増えることは避けられない」とした上で、「災害時に過疎地域が体力を維持するためには、平時から行政や民間団体などが住民との意思疎通を図り、定住人口だけでなく交流人口も確保しておくことが必要だ」としている。

ま、行政としてはごみ埋め立て場が震災で満杯なり、将来のことを考えれば産廃処分場の設置は望ましい。加えて毎年1000万円の寄付が約束されているという。処分場様様という気持ちだろう。
イギリスの住民投票では、EU離脱は望まないが投票は賛成にしたという市民が多く、結果的に離脱ということになった。この結果に驚き、投票を悔やんでいる人間が多いと聞く。
こうしたことから、輪島市の投票に行かない運動もありのような気がする。


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