2017年1月11日水曜日

能登の親不知

「能登の親不知」は知る人ぞ知る秘境である。
海岸からいきなりそそりたつ断崖絶壁。延長にして僅か550mなのだが、江戸中期まではこの区間は能登最大の難所といわれ交通手段がなかった。
その場所は輪島市曽々木と珠洲市真浦間にある。
私が小学生の頃はバスの終点が輪島方は曽々木、珠洲方は真浦まで。当然この区間は車が通る道路がなかった。

人が通れる道は江戸中期の1780(安永9)年~1792(寛政4)年の13年間に亘ってこつこつと開削し、人が何とかすれ違いできる道が開通した。これを麒山道という。
この難工事に取り組んだのは海蔵寺八代住職の麒山瑞鱗(きざんずいりん)和尚。「能登の親不知」とおそれられた能登最大の難所を「寺で座るのも禅だが、人が安全に行き来できる道を開くのも、これも禅の道」と加越能3か国を回って浄財を集めることから始め、たった一人で13年の歳月を要して麒山道を開いた偉人なのだ。
それから約100年後の 明治20年(1887)、峻険な道に手掘りのトンネルが開通した。 そこを麒山道トンネル(八世乃洞門トンネル)という。
もしかしてこの和尚は、九州にある青の洞門を一人で掘った禅海和尚の50年前の出来事にあやかったのかも知れない。
麒山道は現在、波の花道と命名されている。
トンネル入り口の左側に麒山道のアプローチがある
さて、その波の花道にご案内しよう。
しばらくは平坦な道なのだが
 平坦な道をしばらく歩くと福ケ穴という洞穴に遭遇する。幅10m、奥行き70m。その途中に国道のトンネルが交差している。このため、往時の風情が壊された感がする。
福ケ穴
その最奥に不動明王が鎮座している。小学生だったころ、照明なしで最奥まで行くのは怖い思いをした。
不動明王などの仏像
この洞穴を後にするとすぐ手掘りのトンネルに入る。結構長いトンネルもくぐらなければならない。
このトンネルは「せっぷんトンネル」と命名された
東宝映画「忘却の花びら」のロケ地。昭和32年公開。司葉子のキスシーンを見るためロケには近在のギャルが押し掛けた。今では80歳前後のおばあちゃん達である。

やがて最も険しい峠越えとなる
八世乃洞門付近は断崖絶壁
波の花道終点 垂水の滝付近
かなりのアップダウン、延長550mの波の花道、いかがでしたか。でも最近は全線を歩くことができないようです。途中、通行止めとの情報があります。

波の花道の約500m手前に曽々木の名所となっている窓岩があります。若いころそこに登ってみました。そこから眺める景色は絶景でした。
窓岩
昭和38年に、八世乃洞門と曽々木隧道が開通し国道として車道がつながるが、2007年の
能登半島地震で被災。このため内陸へ迂回した八世乃洞門新トンネルが、 2009年12月に完成した。一度車から降りて散歩されることをお勧めします。駐車場は垂水の滝すぐ傍に無料の駐車場があります。


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