2016年9月8日木曜日

新幹線工事監理業務(その3):線路中心を1m移動せよ!

トンネル掘削工事着手以降、断面積14㎡の導坑掘削は順調に進んだ。坑口から200mに達したとき、導坑天井部に穴を開け上部判断面の掘削に取りかかった。
上半掘削が200m進むと上半アーチコンクリートの施工、それが100m進むと側壁部分の掘削、側壁コンクリート打設と順序を踏んでトンネル工事が進められる。
現場は毎日この作業工程で進めるので、毎日同じ単調作業の繰り返しとなるが、現場までの距離が確実に長くなる。
底設導坑掘削先端部(切羽という)

上半覆工(アーチコンクリート)

側壁コンクリート工①

側壁コンクリート工②
3月頃、一人の老人が事務所にやってきてお願いしたいことがあると申し出た。事務助役が区長に対応をどうするか尋ねたところ、私に対応するよう指示があったというので、何で私が?と思いながら一応話を聞くことにした。みすぼらしく見えるその老人は耳が遠く筆談となった。
「私の家が線路に近い位置関係になるので、1mほど全体に移動せよ」という主張であった。馬鹿げた話と決めつけ、そんなことはできるはずはないと突き放した。ところが、「そんなことはない。曲線半径を小さくすれば簡単にできる。」と図面を書きだした。このことは、高等数学の知識を持ち合わせていないと主張できないことである。これには脱帽せざるを得ず、何の仕事をしておられたのか尋ねた。老人曰く、「昔、ここの村長をやっていた」と。
で、新幹線の曲線は高速走行が可能となる半径に決定している。数学的に移動が可能でもそれは無理であるということを丁寧に説明して引き取ってもらった。
人は見掛けで判断してはいけない・・・と思った次第である。
事務所内

当時の事務所は冷房なしがあたりまえ



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