2017年10月17日火曜日

ハドソン&九頭竜川の奇跡


昨年の秋、私はある映画を見に行った。
題名は「ハドソン川の奇跡」。
2009年1月15日、アメリカ・ニューヨーク市で起きた航空機事故を覚えているだろうか? マンハッタン上空850メートルでエンジントラブルを起こした「USエアウェイズ1549便」は、ハドソン川に不時着水。乗客乗員全155人が無事に生還したことから、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれ、世界中のメディアがこのニュースを報じた。

USエアウェイズ1549便は、機体が鳥の群れとぶつかる“バード・ストライク”により、両エンジンが同時に推力を失った。このような両エンジン同時のエンジントラブルはきわめて稀だという。機体の高度は下がっていくが、大都会マンハッタンに大きな空き地は存在しない。サリー機長はハドソン川への不時着水を決断する。

着水の直前、サリー機長は「こちら機長。身構えて、衝撃に備えて」と、コクピットから客室へ短い言葉で指示を出した。機体への衝撃と、機体が落下していく感覚の中、事態が飲み込めずにいた乗客たちだったが、その指示に従った。もしも事前にトラブルを伝えていたら、機内は大混乱を極めたに違いない。彼の指示ひとつをとっても、まさに的確な判断だった。

また不時着水後、なるべく早く救助してもらえることを意識して、船着き場の近くに着水させたことも、彼は計算していたのだ。

エンジントラブルが起きてから、状況を把握し、あらゆる選択肢を吟味し、決断し、着水させるまで、わずか208秒の出来事だった。それは、管制官との音声記録として残されている。鬼気迫る中での冷静な判断が、乗客乗員を救った。
155名全員救助
 この映画を彷彿とさせる飛行機事故が一昨日発生した。

機体が沈み尾翼上部が見える
15日午後3時45分ごろ、福井市小尉町の九頭竜川で、「小型飛行機が川に着陸した」と消防に通報があった。福井県警坂井署によると、小型機が川に不時着。乗っていた男性4人は約10メートル離れた岸まで泳いで脱出し、救急搬送されたが、けがはなかった

小型機は単発のプロペラ機ビーチクラフトA36型で、福井市の医師松原六郎さん(66)が操縦し、知人で福井市と石川県加賀市の60~70代の男性3人が同乗していた。松原さんは「エンジンの不調で不時着した」と話しているという。

松原さんは14日午後、山形県で開催される学会に参加するため、3人を乗せ福井空港(福井県坂井市)を離陸。15日午後1時すぎに山形県の庄内空港から帰途に就き、給油のため新潟空港を経由して飛行中の同3時37分、中部国際空港に無線で緊急事態を宣言した。
不時着現場は川幅約280メートル、水深3~4メートル。 

不時着後、4人は自力で機体から脱出し、約10メートル離れた岸までたどり着き、福井県の防災ヘリコプターで堤防まで引き上げられた後、救急車で搬送された。機体は尾翼の一部を残して沈んだ。

同日午後1時10分に山形県の庄内空港を離陸し、午後1時43分に給油のため新潟空港に着陸。約40分後に同空港を離陸し、福井空港に向かっていた。福井空港には午後5時前に着陸予定だった。

現場はJR福井駅から北西に約12キロの田園地帯。

国土交通省は15日、この事故を重大インシデントと認定。運輸安全委員会は16日、航空事故調査官2人を現地に派遣する。

  エンジン停止状態で大惨事が起きる可能性があったが、けが人ゼロで脱出させることに成功した事故機パイロットで福井市の男性医師(66)が、状況を振り返った。向かい風を利用した着水など、冷静な対応ぶりが明らかになった。

医師は航空関連の学会に参加した後、庄内空港(山形県酒田市)を15日午後1時に離陸。給油のため新潟空港(新潟市)を経由し、福井空港(坂井市)に帰ろうと順調に飛行していた。

ところが、着陸態勢に入ると、異変が生じた。音などから「エンジンにガソリンが供給されていない感じがあった」といい、プロペラの回転が落ちて1分ほどでエンジンは停止。空港までの距離を考え、川への不時着を決断し、管制官に「川に不時着したい」と緊急事態を告げた。

その際、10年以上のフライト歴から選んだ、飛行ルートが功を奏した。日本海側から進入する際は必ず、住宅街を避け、300メートル前後の川幅がある九頭竜川の下流沿いに、福井空港の西側を回って着陸することにしていた。事故当時も同川の上空を南下しており、「離着陸時は常に墜落という最悪の事態を考えていたことが良かった」と振り返る。

追い風だった北風を意識し、風上に向けて機体を旋回。向かい風を受けて減速、降下させながら川面に近づき、水面を滑るように着水した。さらに衝撃で機内に閉じ込められるのを防ぐため、着水の直前には後部ドアを少し開けておいた。

泳ぐ距離を短くするため、左岸近くに機体を運ぶことにも成功。着水してから救命胴衣を着けて岸まで泳ぎ着くと、飛行機は間もなく沈んだ。「想定通りにできた。人に危害を負わせずに済んで、ほっとした」と胸をなで下ろした。

このパイロットもハドソン川に不時着したパイロットも、パニック時に冷静沈着な行動と的確な判断をして最善策を採った。
私にはとうていできないことである。


0 件のコメント: