昨日は奥能登地方の伝承行事である「あえのこと」があった。そういえば小学生の頃まで、親父がこの伝統行事を熱心にやっていたことを思い出した。そのころ、5人家族が何とか食える程度の田んぼがあった。当時40代だった親父は、朝は必ず裏庭に出て太陽に向かって柏手を打って拝んでいた純粋な心だからこそ、「あえのこと」と真剣に向かい合っていたのだろう。
輪島市白米の川口喜仙さん宅の神様を田にお送りするおもてなし |
姿は見えない神様、それも盲目の神様なのだという。その神様の手を取り家に導いて風呂に案内したり朱塗りの御膳にご馳走を盛り、神様にお召し上がりくださいとおすすめする。そんな仕草を終えた親父に、「神様はほんとにおってが?」と聞いたものだった。すると親父は「見えんけどおってぎぞ」と。
「奥能登のあえのこと」という名称で2009年にユネスコ世界無形遺産に登録されて、全国的に知られるようになった。昨日は12月上旬にお迎えした神様が田んぼにお帰りになる日だったことから、奥能登各地で田の神様の行事が行なわれた。家から田まで神をご案内してこの儀式は終わる |
稲作は天候により豊作だったり不作だったり。農民としては安定した収穫は神におすがりするしかなかったので、このような儀式が行なわれるようになったようである。
だが、人口減少著しい奥能登において、朱塗りの御膳を揃えた農家はもう数えるほどしか残っていないように思う。長く伝統行事が続くように祈らざるを得ない。
0 件のコメント:
コメントを投稿