2020年11月14日土曜日

新幹線加賀トンネル工事難航で開業1年半遅れ

新幹線加賀トンネルの側壁にクラックが発生し、その対応策で開業予定が1年半も遅れるということで、連日新聞紙上が賑わっている。今まで何故連絡がなかったか、県に対する通知が遅すぎる、1年半は長過ぎ、産業経済界に与える影響は計り知れない・・・と政府や鉄道建設・運輸施設整備支援機構を非難する記事が多い。工事費増額負担金には応じるわけには行かないという声もある。だが、新幹線建設工事の経験者として、自然的現象の予測は困難が伴うということを知って欲しいと痛切に感じた。

かつて自分は山陽新幹線建設で広島~岩国間の大野トンネルを担当していた。そこで遭遇したのは断層破砕帯であった。切羽と称する最先端の掘削面の上部から水分を含んだ土砂が吹き出したのである。危険なので作業中止、治まるまで待とうということにした。3日たち、4日たっても治まることは無かった。出るだけ出そうとなって1ヶ月経過、勢いが衰えたのを見計らってバルクヘッドというコンクリートで地山を塞いだ。これで工事は完全にストップした。

その後、いたずらに指を咥えて見ている訳にはいかないので、100m手前から別ルートで「迂回坑」を掘削して断層破砕帯を突破することを試行することになった。断層破砕帯の幅は約1mであることが分かった。そこからなお前進し予定の本坑掘削地点に到達して、所定の導坑掘削を進めた。破砕帯幅は1mだったが、本坑方向が薄い角度で破砕帯に遭遇したので難航したことになる。約3ヶ月後、ようやく破砕帯に薬液注入工を施工することに決定し、1ヶ月を要した。たった1mをクリアーするために準備を含め6ヶ月近くかかったのである。

長さ12mのボルトを1400本打ち込む計画
加賀トンネルは、国土交通省や工事を発注する「鉄道・運輸機構」によると、トンネル内の7カ所延べ約1キロで、地下水を含んだ土が膨張し、地面にひびが入っているという。ひび割れは3月に判明。膨張をおさえるため、これまでに長さ12メートルのボルトを約200本打ち込んだ。ボルトは少なくともあと1200本が必要だが、機構側によると、資材調達のめどは立ったものの、トンネル内の特殊な環境下でボルトを設置する専門性の高い作業を担う人材確保が十分でないという。また、工事が進む中で、今後必要なボルトの数が増える恐れも否定できないとしている。

北陸本線複線化工事では頸城トンネルもこの膨張性地質で難航した。この工事も大幅に工期が遅れた。何せ自然が相手、予め何日間で完成させるという約束は不可能なこと。「トンネル工事は神様が相手」といわれ、女人禁制で入坑は許されなかった。口笛は厳禁、何も知らない若かった頃、能登線小木トンネルで口笛を吹いてこっぴどく叱られた。山を呼ぶ、要するに土砂崩壊を誘発するという意味だった。

国と施主側はただひたすらお詫びの姿

コンクリート覆工以外の路盤下部にもボルトは必用
施主側の怠慢という報道で、「それはちょっと違うのでは」と云いたい。

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