小学生の頃、親父の生家である「本家」によく行った。本家の跡取りは、いろいろあって親父の弟である5男が継いでいた。どこの田舎でもあったように、本家には囲炉裏があった。その囲炉裏にはいつも牛の餌を煮る鍋が自在鉤にかけられていた。薪は雑木と杉の枯葉だった。いつしかその囲炉裏に座る場所が決まっていることが分かった。
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本家の囲炉裏のイメージ |
親父が自分の家で商売を始めてから囲炉裏に自在鉤を吊り下げ、茶釜がぶら下げられた。
囲炉裏を囲んで座る場所も決まっていた。
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囲炉裏の座る場所の名称 |
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囲炉裏を囲む座る場所 |
この間取り図にABCDと記号が記入されている。親父の場所はA。ちなみにこの場所は「横座」という。Bは来客席。普段は私が座った。Cは「かか座」といい、母の居場所だった。Dは「下座」といわれ、姉や妹が座った。
わが家の自在鉤は真鍮製である。今は使用していないので天井に固定されている。
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わが家の自在鉤に似ている |
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幼かった時代を思い出すイメージ写真 |
この囲炉裏を囲んで親父から戦争の話をよく聞いた。呉、大連、ハルピン、駆逐艦勤務でシンガポールやベトナムを訪れた様子、上海上陸作戦の戦闘模様などを話してくれた。
囲炉裏にはそんな思い出があるので、長火鉢を買うきっかけとなった。しかし、囲炉裏のある実家の傷みが進んできて今後どうするか悩みはつきない。
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