自分の住んでいる町のとなりが福久町なのだが、この町内の一角に「箔団地」がある。ウン十年前に、東山に集積していた箔打ち職人の家は騒音問題で福久町の一角に箔打ち団地が造成されそこに移転したのである。
箔打ち職人は減少の一途をたどり、今では少数の職人になっている。そんな中、現在88才の職人が健在で今なお職人技を遺憾なく発揮されている人があるという。64才で退職した自分が情けなく思えるではないか!
あと一年半は続けたい・・・と |
全国で唯一のプラチナ箔(はく)職人が福久町の高橋幸一さん(88)だ。職人の道に入り七十年。金箔(きんぱく)とはまた違う輝きを放つプラチナ箔を生み出す繊細な手仕事は、多くのアーティストたちから愛されているという。
プラチナは硬く、金箔よりも打ち延ばすのが難しい。プラチナの箔打ちは、プラチナをグラシン紙にはさみ、それらをいくつも重ねてさらに袋革で包む。機械のハンマーで連続してたたき、一万分の七ミリの薄さに延ばしていく。これに対し金箔の厚さは一万分の二〜三ミリ。高橋さんも始めた当初はなかなか思い通りに延ばせず粉々になったといい、「金と同じくらい延びてくれれば楽なんだけどね」と苦笑する。
プラチナ箔の出来栄えを確認する高橋幸一さん |
プラチナを打つ機械の動きは、金箔を打つ場合よりゆっくりだが、それでも一分間に約三百回たたく。高橋さんの右手の親指はつぶれ、爪も割れており「つぶれてからが一人前だよ」とさらり。厳しい職人の世界がうかがえる。高橋さんは、高校卒業後すぐに、銀箔(ぎんぱく)職人だった父親の跡を継ぐため工房に入った。アルミ、金、銀、真ちゅうなど「ありとあらゆる金属を打ってきた」と胸を張る。
県箔商工業協同組合によると、高橋さんは唯一のプラチナ箔職人だが、難易度が高いプラチナは元々打ち手が少ない。金箔産業自体が全盛期よりも落ち込み、周りの工場から聞こえる音が静かになって「さみしい気持ちはある」と高橋さん。「誰かに受け継いでほしい」ともこぼす。
あと一年半やりたいと言われるのだが、90才まで頑張ろうということか。
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