2016年11月10日木曜日

博多地下鉄工事は工法選択の誤り

博多駅前道路が30m×40m×15m(深さ)にわたり陥没した。動画で信号機や舗装が崩落する模様が映し出された。

トンネル工事経験者としてその見解を述べたい。
崩落した土砂のボリュームは18,000㎥に及ぶ。その大量の土砂はどこに消えたのか?
それは工事中の地下鉄トンネル工事現場を埋め尽くした。
工事現場は延長400m程度にわたり泥水で埋まっていると推定できる。
原因は掘削天井部から先ずアリの一穴から地下水が滲出し、被圧水が急激に大きくなり土砂と共に噴出したと考えられる。9人の作業従事員は生きた心地がなく、あわてふためいて脱出したに違いない。

地下鉄トンネル工事の掘削工法はNATM(ナトム)。語源はニュー・オーストリア・トンネル・メソドの頭音字を組み合わせた。新墺式掘削工法ともいう。
そもそもこの掘削工法は、岩盤が非常に堅固な山岳トンネルに適用されるものである。
岩盤に長さ1m~1.5mの鋼棒(ロックボルトという)を1m間隔に打ち込み、鋼棒の摩擦力により地山の崩落を防ぎ、掘削表面全部分にモルタル吹付を施工して硬化後次に進む工程を繰り返す。

東京の地下鉄はシールド工法を用いた。海底や堀の下部などに適した工法であるが、工事費がNATMの何倍にもなる。掘削はボーリングマシンで行い、工事現場は完璧にドライの状態を保つことができる。

博多の場合はトンネル部分が岩盤であるが、掘削上部から粘土層までの厚み(被りという)が1~2mしか確保されていない。したがって、鋼棒の摩擦力が効くところと効かないところが生じてバラツキがあり、かつ、鋼棒取り付け用削孔により被圧水が誘導される。
しっかりとした地質調査がなされており、地質縦断面図も整備されている条件のもと、工事発注者がNATM工法を採用したことが安全軽視したと指摘されても仕方ないように思える。
このような大事故にも拘わらず、死者が無かったことは奇跡的でさえあったことに安堵感を覚える。

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